神経症の人の「思い込み」 78

counselor

2011年05月19日 13:53

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今日も、神経症の人の「思い込み」を述べます。

神経症の人は、その人なりの「思い込み」に苦しんでいます。
ある人にとってはとても不安になることが、ある人にとってはまったく問題にされません。
逆にある人にとってはまったく問題にされないことが、ある人にとってはとても不安になります。
これはその人なりの「思い込み」が、異なるからです。

それはそれぞれの不安を否定的に支える、「思い込み」があるからです。
それぞれの不安に、それぞれの「思い込み」は対応しています。

特に神経症の人の「思い込み」で多いのは、「見捨てられる不安」です。
自分が誰か、周囲の人から見捨てられることを恐れるのです。
そして「見捨てられる不安」に支配された人は、見捨てられないために生きることになります。

次に神経症の人の「思い込み」で多いのは、「自分は一人では何もできないかもしれないという不安」です。自分は周囲の人からのサポートがなければ、何もできないと恐れるのです。
そしてこの不安に支配された人は、自己無力感をさ迷います。

このタイプの人は、自分自身に対する否定的な評価をしがちです。
マイナスの自己評価をしがちです。

他者との関係においても、とても用心深いことも特徴です。
常に他者に用心深い、態度をとります。

常に、バリアを張りめぐらしています。
そのバリアの中に入れた人とは、逆にとても仲良くなれます。

「自分は一人では何もできないかもしれないという不安」に取りつかれいる人は、その思い込みに強く動かされます。

逆に言えばその思い込みそのものを修正すれば、大きな変化が起きるのです。
神経症の本質的な解決は、歪んだ思い込みの修正にあります。

常に「パーフェクトにものごとを行わなければいけない」という思い込みに支配された人は、この「パーフェクトにものごとを行わなければいけない」という思い込みを修正すればいいのです。そしてそれが、本当の解決です。

本当の解決は「パーフェクトにものごとを行わなければいけない」という思い込みの、修正そのもにあります。それにより、思い込みに支配されなくなります。

神経症の人は歪んだ思い込みに支配され、身動きできない状態です。
歪んだ思い込みはその人の生活も、奪いさってしまうのです。

思い込みは、色の付いたメガネのようなものです。
現実を、その色に染めてしまうのです。

たとえばテスト不安の人は、テストで失敗するというメガネをかけています。
その色に現実を染めて、見てしまうのです。

現実はより失敗に見え、それがさらに強まります。
その結果、現実そのものもそちらにハンドルを切っていくのです。

このように歪んだ思い込みは、歪んだ行動も生みます。
その歪んだ行動は、歪んだ思い込をも証明してしまうのです。

それは、次のように表せます。

歪んだ思い込み→歪んだ行動→歪んだ思い込の証明

そしてそれは、さらに次のように続きます。

歪んだ思い込の証明→歪んだ思い込みの強化→歪んだ行動の強化→歪んだ思い込の証明
の強化

このようなメカニズムにより、歪んだ思い込みは強化されます。
その結果、悪循環から抜け出せなくなるのです。

このような歪んだ思い込みに苦しむ姿を、モデルにより述べます。
先ず若い主婦です。この人はご主人との関係で、思い込みにより苦しんでいました。

最近、ご主人の帰宅が連絡もなく遅いのです。多くの場合、彼には彼の事情があると考えますがこの人はそう考えません。そう考えられないのです。

連絡できない事情を、「私を嫌になったのかもしれない」と考えます。
そしてそれは、「~~~に違いない」と悪い方に変わっていきます。

即ち「私を嫌になったのかもしれない」という考えから、「私を嫌になったに違いない」と悪い方に変わっていきます。常に、悪い方に進んでしまうのです。

最後には、「離婚になる」と考えるのです。
その理由は、「私に~~~といういたらぬ点がある」からだと考えます。

たとえば、「私に愛想がないといういたらぬ点がある」からだと考えます。
さらに、「私に暗い性格といういたらぬ点がある」からだと考えます。

このように、すべて自分のせいにして苦しむのです。
その裏側には、極端な理想像がかくれています。

この人の裏側にある極端な理想像は、次のものです。
「私はとても愛想が良くなければならない」であり
さらに、「私はとても明るい性格で、周囲の人をも明るくさせなければいけない」です。

この人は「私はとても愛想が良く『なければならない』」や、「私はとても明るい性格で、周囲の人をも明るく『させなければいけない』」という、理想像にともなう思い込みに苦しんでいたのです。

精神分析療法では、この人の発達的な問題を解決する方向に進みます。
実際にこの人も、発達的な問題を持っていました。

それは両親の、離婚によるものでした。
この人は両親の離婚後に、他者の言動にとても敏感になりました。

他者は結局最後は、自分から離れていってしまうんだと思うようになりました。
それにより、さらに安心感も奪われたのです。

発達的な問題は、両親の離婚によるものでした。
このことをさらに追求し、改善に進むのが精神分析療法です。

ただしこのような方法は、カウンセリングに多くの時間を必要とします。
それに対して、現在の問題としとらえる方法もあります。このほうが、現実に沿った解決方法です。

それが認知療法であり、認知行動療法です。
この女性は「自分は愛想がなく、暗い性格」という、自己像に苦しんでいたのです。

この女性の自己像には、大きな歪みがあります。
それは「自分は愛想がなく、暗い性格」というように、決め付けていることです。

その決め付けから、主人は「私を嫌になったのかもしれない」と考えていくのです。
決め付けから後の考えは、決め付けに沿ったものになります。

その結果、歪んだ決め付けを裏付けてしまうのです。
気付いたときには、歪んだ決め付けは本当のことになってしまいます。

その決め付けの根底には、大きな認知のゆがみがひそんでいます。
それは「信号は青か赤か」という、考え方です。

現実は、「信号は青か黄か赤」なのです。
信号には、黄色もあります。

ところがこころの中にあるゆがみは、「信号は青か赤か」という考え方を生みます。
その結果、その人自身が苦しむのです。

こころのゆがみの悪循環は、大きな認知のゆがみから始まります。
本人は、その事実に気付いていません。

この「思い込み」を、正していけばいいのです。
そのためには、ものごとを「たまには~~」と考えればいいのです。

この女性は「自分は愛想がなく、暗い性格」という、自己像に苦しんでいました。
そこで「自分は『たまには愛想がなく、暗い気持ち』の時もある」と、見方を変えたのです。

この女性は「自分は愛想がなく、暗い性格」という自己像を、確認する生き方を自分自身にしいていたのです。それに、苦しんでいました。

ただしそれは、ほんの小さなことを切っ掛けに始まった思い込みでした。
思い込みの悪循環でした。

その思い込みの悪循環から抜け出すために、次の方法を用いました。
それは「私に愛想がなく、暗い性格といういたらぬ点がある」ことの、具体的な証拠を挙げるのです。

本当に愛想がなく、暗い性格と指摘されたことがあるのか?
そうするとそれは多くの場合、ありませんでした。むしろ逆が多いのです。

この女性に友人は、よくこころを開いて話しかけてきたのです。
信頼を示していたのです。

この人を「愛想がなく、暗い性格」という人はほとんどいません。
それよりは「めんどうみの良い人」と、よく言われました。

このようにこの人の自己像には、ずれがありました。
これを正すための方法を、述べます。

次回に、さらに述べます。

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